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一刀両断
しろすけ


不思議の国・建築界を斬る!


しろすけさんはデザイナーです。

だから、建築業界のこと、不思議に思ってます。

素朴で素直な疑問の数々、見事な切れ味、一刀両断!

1999.4.21

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ファースト・コンタクト


DOSマシン自体はまだ僕も現役で使ってますし(テキスト打ち専用)そのことは別にいいのですが、しばらく通って驚いたのは全てのCADが「図面描き機」だとわかった時です。

はっきりいって、もっと前から僕達の業界ではコンピュータは「版下仕上げ機」ではなく、「アイディアプロセッサー」として活用されていましたし、(少なくとも僕の周りでは)「手でやった方が速いことは手でやる」という使い分けも当たり前の世界でした。

正直「なんてもったいない」と素直に思ってしまいました。

そうこうするうちに、多くの建築関係の方とお会いしたり、電話でお話するようになって、難しい部分もなんとなく見えてきた様な気がしていますが、やはり毎日驚きの連続(というとちょっと大袈裟ですが)です。

わからない…


未だに一番良く分らないのが、(何をいっとるんだ!と怒られてしまうかもしれませんが)「図面ってそんなに正確にかかれてる必要あんの?」という点です。

工業デザインやグラフィックデザインの場合、図面や版下の精度がそのまま最終成果品に反映されてしまいますので、いきおい正確にならざるを得ませんが、建築物の場合、最終的には大工さん(というか施工の人)が作るわけで、しかも図面上に必要そうな寸法は全部数字で描いてありますよね。

しかしながら、建築家の皆さんは図面上の数ミリの違いがめちゃめちゃ気になるようで、「なんで?」と困惑しています。あまりにも見た目に形が違って見える程不正確ではさすがにどうかと思いますが、図面上で何ミリか寸法が違っているからといって、最終成果物である建物が建つ時にそんなに影響あるの?と思ってしまいます。

知人も設計をしていますが、恐らく正確にかかれているであろう図面を持ってしても、現場で寸法が合わなくなった、などという話を聞いていると、ますます「?」は募る一方です。

通常、グラフィック屋の場合は、「デザイナー」と「版下作成者」の業務は全く別のものとして認識されているので、余計にそう思います。

驚愕の建築士試験!


図面といえば、つい1ヶ月ほど前に初めて知って、これまたびっくりしたことがあります。知り合いの女性が二級建築士の試験に合格したのですが、彼女はもうずいぶん何度もこの試験を受けていて、「なんで受かんないのかな?」とずっと思っていたのですが、理由を聞いてびっくり「手で図面を描くのが遅かったからいつも間に合わなかった」からだそうです。

「え?手で描いてんの?」という感じでした。「ほんとに?」
試験自体が何をやっているのか知らなかったのですが、まさか手で描いているとは思いませんでした。「◯◯級図面製作士」という資格があったら役割がはっきりしていいんじゃないかな、などと考えてしまう今日この頃です。

希望の星が…


と、このようにオドロキの毎日ですが、なんだかこのところ(ここ一年くらいでしょうか)反応が以前とは変ってきたように感じています。

いわゆる「アイディアプロセッサー」という考え方が徐々に浸透してきたのかな、と思っています。「アイディアプロセッサー」という考え方は決して古いものではありませんし、良く知って活用すれば大変な武器になるものです。
実際、建築系以外の業種の人(主に僕の友達ですが...)は、例外なくデザインソフトを「アイディアプロセッサー」として活用しています。

ここにきて各種教育機関でこういう考え方をモノにしてきた人達が、社会で活躍し始めたこと、コンピュータのパフォーマンスの上昇(コストは下降)、危機感を持たずにはいられない長引く不況、などが後押ししているのかな、などと思いつつ、ずっと口説いていた相手がやっと口を聞いてくれるようになった(変な例えですが)時のような、じわじわくる感じを味わっています。


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